キアギス 続
「柚!!」

俺は街に向かって走った。

門は無く中が丸見えだ。

「柚!何処だ!?」

街の中に入ると中央に誰かが倒れているのが見えた。

「まさか……嘘だろ…?」

恰好や背丈、全てが柚に似ていた。

紗月は恐る恐る近付いた

「柚!!!」

そう、倒れていたのは柚だった。

「柚!!おい、返事をしてくれ!!柚」

柚は大勢の人物に暴行を食らわされたような怪我をしていた。

「にぃ…さ…ん…」

「柚!!何があった!誰にやられた!?」

「ダメ…だよ…。…言えない」

柚は時折、血を吐きながら言った。

「どうしてッ!!」

「ダメだよ……兄さん…」

そう言って柚は気絶してしまった。

「…だれか…誰か何があったか知りませんか!!どんな事でも良いので教えて下さい!!」

俺は野次馬に向かって叫んだ。

「…お願いします!!誰か教えて下さい」

しかし、誰も口を開こうとしなかった。

「…青年よ。そこの子の治療をした方が良い。家においで」

「貴方は…?」

「わしはガラだ。討伐隊隊長だ。ほら、とにかく早くおいで」

ガラはがっちりした体だった。

見た目でも四十歳を越えてそうだが隊長という事は今も現役なんだろうな…。

そう思いながら着いて行った。

「あのー…ガラさんはコイツに何が遭ったか知ってますか?」

そう聞くとガラは気まずそうな顔をしてから紙に何かを書き、俺に渡した。

紙には「家に着いたら話そう。此処では全ての会話が国王に届いてしまう。家の中は安心だ」と、書いてあった。

「……」

どうしてそんな事を…

そう聞こうとしたけど、これも家で聞いた方が良いと思い黙ったまま紙を返した。

そして、黙ったまま家へ着いた。

「さて、治療をしながら話そう」

ガラは柚を治療台に乗せながら言った。

「コイツは…柚は誰にやられたんですか?」

「……領主の定めを破ったんだ」
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