狂奏曲~コンチェルト~

「つばちゃん?」
「あ、いや、ごみがついてた」

 あわててその手を引っ込めた。

 危ない。
 かなめのことを抱きしめたくて仕方がない。
 そんな可愛い顔で俺を見るなよ。
 俺の忍耐力試してんじゃねぇよ……。

 かなめはじっと俺を見た。
 その顔が妙に色っぽくて、俺の心臓が激しく暴れだす。

「つばちゃんはさ、冴島さんのこと、好き?」

 かなめ、なんでそんな真剣な顔で聞くんだよ。

「いや、ただの友達」
「そっか」

 なあ、なんでそれを聞いて、安心したような顔になるんだ?
 お前は、俺のことどう思ってるんだよ。

「なあ、お前の好きな人って、誰?」

 俺は、どうしてそんなこと訊くんだよ。
 他の男の名前なんて、聞きたくないのに。

「えー、秘密だよ」

 かなめが照れたようにそう言う。

「高山ってやつ?」
「高島だけど、秘密だってば! つばちゃんには言えないよ! お兄ちゃんに言っちゃうじゃん」

 なあ、かなめ、お前をここで抱きしめても良いか?
 かなめ、その瞳に俺だけを映してくれよ。

 俺は、お前を想って、気が狂いそうになるんだ。


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