狂奏曲~コンチェルト~
俺と有紀は、近くのゲーセンに来ていた。
「かなは最近、ますます可愛くなったよな」
シスコン有紀がでれでれと言う。
この男は、自分がなかなかの男前なのに、こうやってシスコンをさらけ出すから女に逃げられるんだ。
でれでれしていたかと思うと、いきなりずどんと落ち込んで、
「恋でもしてるのかなー」
「好きな人がいるって言ってたぞ」
有紀は顔色を変えた。
「誰だ!?」
「俺はお前に言うから、俺には教えられないんだと」
「かなは俺だけ見てればいいのに!」
有紀が羨ましい。
そうやってかなめへの想いを口に出せるから。
まあ、兄妹愛と、俺とかなめの間の感情は違うんだろうけど。
「お前がもたもたしてるから悪いんだ」
「は? 俺のせいかよ」
「お前がさっさとかなに想いを伝えてればな、かなは他の男なんて見てる余裕はなかったんだ」
「八つ当たりだろ」
有紀は俺を横目で見ながら、
「さっさと告白しろよ」
「できたら苦労しねぇよ」
全く、できたら苦労しねえ。