狂奏曲~コンチェルト~

「かなめのやつ、無防備に俺の部屋にきやがる。どんだけ俺が理性振り絞ってると思ってるんだ」
「偉い偉い。それでこそわが親友だ」
「冗談言ってないで、かなめを俺の家によこすな」

 恨めしい声が出た。

「わかったわかった」
「本当にわかってるのかよ」

 俺はその場にしゃがみこんで、

「俺にかなめを傷つけられたくなかったら……ちょっとは俺の気持ちを悟れよ」
「翼……」

 物心ついたときから、一緒にいた。
 それがいつの間にか、一番大切な存在になった。
 そうしたら、独占したくなった。
 俺だけを見て、俺だけを想って、一生俺だけを愛して。

「かなの好きな人って、お前じゃないのか?」

 有紀が俺を見た。
 俺はいぶかしげに有紀を見る。

「そんなわけないだろ」
「言い切れるのか?」
「かなめは俺のことなんかなんとも思ってない」

 だから苦しい。
 あの瞳に、俺だけが映ればいいのに。

「ま、かなを泣かすようなことだけはすんな」
「…………」
「おい、返事ないのかよ」

 このままだと、かなめを傷つけてしまいそうで、俺は有紀の言葉に応えられなかった。

 思えば、このときから少しずつ歯車は狂い始めていたんだ。
 いや、最初からボタンを掛け違えていたのかもしれない。
 俺がかなめを好きになった、その瞬間から。
 かなめが、俺の幼馴染みとして生まれてきたその瞬間から、運命は残酷に定められていたのかもしれない。


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