狂奏曲~コンチェルト~
その数日後、本郷家は引っ越していった。
あれから一度もかなめの姿を見ていない。
引っ越す前に、目の前に現れた有紀が言っていた。
かなめは俺のことを覚えていない、と。
ショックのあまり、俺のことだけを忘れたらしい。
有紀はこうも言っていた。
有紀は俺を恨んではいないと。
そんな有紀の言葉も、俺には届いていなかったのかもしれない。
あの日失われた色は、二度と俺の目に帰ってくることはなかった。
心因性による色覚障害。
かなめを失った俺は、世界の色まで失った。
ごめんな、かなめ。
謝っても謝っても、過去は変えられない。
俺は、二度と誰も好きにならないから。
俺は、二度と誰も愛さないから。
許してほしいとは思わない。
俺は、お前だけを一生思い続けるから。
幸せになろうなんて、思わないから。
かなめ、俺はお前を愛してる。
一生をかけて、償わせてほしい。
俺は、お前だけを愛している。