狂奏曲~コンチェルト~
「私がいなかったら、つばちゃんはほのかを好きになったかもしれないのに……」
憎い相手であろう私に、ほのかはきちんと謝った。
「ごめんなさい……」
「謝らないで」
ほのかは、そっと私の肩に手を置いた。
「かなめに謝られたら、あたし惨めになる」
「……っ」
ほのかは苦笑して、
「翼にも、謝られたんだよ。そのときは、怒鳴りつけちゃったんだけど……」
「ほのか……」
「もう、無理。五年って、ちょっと長すぎた。もしも、未来に少しでも可能性があるのなら、あたしはまだ我慢できたかもしれない。けど、あたしは自分で自分が許せない」
ほのかは泣きながら笑って、
「このままじゃ、前に進めなくなる。翼には、かなめしかいない。翼がかなめと再会した時点で、あたしは諦めなくちゃいけなかったの」
ほのかが私の手を握り返す。
「今まで、本当にごめん。翼のこと、よろしくね」
そう言って、背中を向けたほのか。
その姿は颯爽としていて、憎い相手であるはずの私を応援して、認めてくれた彼女は、本当に綺麗で――。