狂奏曲~コンチェルト~
「お前もこの大学に通ってるなんて、夢にも思ってなかった」
「俺も、まさかここで有紀に会うなんて……」
俺は目を閉じた。
灰色の有紀を見ていると、今までの俺の思い出の中の有紀までも灰色に染まってしまうような気がしたからだ。
「しかし、翼にロックの血が流れてるのは知らなかった」
冗談めかして言う有紀。
俺の髪の毛のことを言っているのだと気づくのに、時間がかかった。
「……染めてるわけじゃない」
「ん?」
俺は、全てを告白する気持ちで口を開いた。
「あの後、俺は色覚障害と壮年性白髪を併発した。原因は心因性のストレスだと思う」
「色覚障害……?」
驚いたように俺を見る有紀に、俺はうなずいた。
「色の判別が、突然できなくなった。全部、灰色なんだ」
「翼……」
俺は自嘲気味に笑って、
「俺がかなめにした仕打ちに比べたら、こんなことはどうってことないんだ」
俺の言葉に、有紀が痛ましそうに顔を歪めた。
「有紀がそんな顔するなよ。お前は、俺を責めていればよかったものを……」
決して俺を責めなかった有紀。
しかしそのことまでも、俺の罪悪感を増幅する材料になっていた。