狂奏曲~コンチェルト~

 俺の中でくすぶる罪悪感は、消えることなく、徐々に勢いを増して、いつかは己をも焼き尽くすほどの業火となる。
 それは予感だった。
 俺が犯した罪の、代償。

「かなめは、どうしてる?」

 こんな俺が彼女に望むのは、幸せ。
 彼女が幸せでいてくれれば、俺は何もいうことがない。
 だが、俺のせいで彼女の幸せが奪われてしまっていたら……?

 有紀はやはり寂しげに微笑んだ。

「かなは、元気だよ」
「……そうか」

 かなめがどこで何をしているのか、俺にはそれを訊く勇気はない。
 その資格もない。

「かなは、あの後しばらくはショック状態が続いていたけど、しばらくすると立ち直った。でも、やっぱり翼のことは全く覚えていなかった」
「そうか……」
「今では、あの時の事も忘れてるんだと思う」

 かなめがあのおぞましい出来事を覚えていないのなら、それに越したことはない。
 しかし、かなめが覚えていなくても、俺の犯した罪が消えることはない。

 有紀がふと微笑んだ。

「翼、俺はお前を責めていない」
「なん……でっ」

 思わず、大きな声が出た。
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