狂奏曲~コンチェルト~
「俺は、翼をよく知ってるから」
「……責めろよ……」
俺の目から、涙がこぼれる。
「殴れよ」
「お前が自分をそんなに責めてるのに、俺までお前を責める必要はないだろ」
俺は机を殴りつけた。
机に丸いシミが落ちる。
「俺はな、かながお前を責めていたら、お前をぶっ殺しているところだった」
「……責めてるに決まってるだろ!」
かなめを深く傷つけた俺。
それを、かなめは恨んでいるに違いない。
しかし、有紀は首を横に振った。
「お前、許せない相手を、忘れてしまえると思うのか?」
「な……に?」
「俺なら、忘れられない。もしも相手が許せないのなら、一生覚えていると思う。けど、かなめが忘れるという選択をした」
有紀がなにを言いたいのかわからず、俺は有紀の言葉を待った。
「俺は、かながお前のことを忘れるという選択をしたのは、お前との思い出を守るためだったと思ってる」
「……そんな都合の良い話があるか……」
かなめは、俺を恨んでいる。
かなめは、俺を許せないと思っている。