あの日の空を見上げて
『俺はいかない!
父さんとなんか一緒に死にたくない!!
母さんと父さんだけで死んじゃえばいいんだ!!』





海斗もよく分からないまま
『兄ちゃんがいかないならいかない!』







と俺にしがみついてくる。





俺まだ4歳で
“死ぬ”というのがどういうことかということをはっきりと分かっていなかった。






ただ親父と一緒にいたくないという気持ちだけでそう言ってしまったんだ。






――無知は時に凶器となる。





俺達のこの言葉で親父は決心したようだった。






『包丁持ってくる。』






そう言うと俺達には目もくれず台所に向かった。




母さんは少し寂しそうな顔をしただけですぐに





『元気でね。
ちゃんとご飯食べるのよ。』






と俺達に優しく微笑んだ。





―それが俺達の見た母さんの最後の笑顔だった。
< 5 / 11 >

この作品をシェア

pagetop