恋と愛とそれから彼と
「昔はもっとこう‥‥、」
『そういえば、あの頃から俺は眼鏡だったか。』
「文豪みたいな眼鏡だったよ。丸くて小さめの。」
『今もそうじゃん』
「今はそれがお洒落に見える。」
はは、と苦笑いをしたのは俺だった。それを受けてか、彼女はもう一度、「ハヤトだよね?」と聞いてくる。
『ナオが言う"ハヤト"は俺だよ。でも確かに、あの頃より幾分派手になったかもね。』
「幾分?随分だよ。」
『でもあの日、俺を見てすぐに"ハヤト"って認識したわけだから、そんなに変わってないんじゃない?』
前方から家族連れが歩いて来た。
ベビーカーを押していて、両親はとても若い。
すれ違いざまに、彼女は子どもに笑顔で手を振った。
「本当は、半信半疑だったんだよ。ハヤトだろうなって感じ。」
『もう少し疑ってよ。騙されるよ。』
「変わった理由は答えてくれる?」
真っ直ぐな瞳に、一瞬揺らぐ。
これは俺から言っては意味がないはずなのに。
『答えられないかな。』
「だと思った。」
『理由は探して。ナオに見つけてもらいたい。』
「どういうこと?」
『そういうこと。』
彼女の中に答えはある。