恋と愛とそれから彼と




と、言いながらも、彼女が涙目で答えを乞うのであれば、俺は勿論答えてしまうだろう。

まぁ、彼女の性格上、そんなことは万に一つとして起こらないと言い切れるが。

だからこそ、そうなると答えてしまう。





「探しても見つからなかった時は?」

『そうだなぁ、』





空を仰いだ。やはり雲は見当たらない。

「見つからなかった時」か。
どうするべきだろう。そこまで用意していなかった。

数秒間、思考の回路をさ迷う。
あちこち扉を開けてみたが、どこも空っぽだった。

それなら答えは簡単だ。





『その時は、お別れかな』

「お別れ?」

『俺はナオの人生の一瞬になる。』

「どういう意味?」

『要はね、思い出の先は描かないってこと。』





風向きが変わる。向かい風が追い風になり、彼女の長い髪の毛が前に流れた。





『ナオが、どうしても一緒に居たい!って言うなら考えてあげてもいい。』

「なんで上から目線かな、」

『あ、否定しないの?』

「そうじゃない!」

『可愛くないなぁ‥‥』

「じゃあ可愛い子のところ行ってよ。今なら許してあげる」





彼女は自分が言った言葉の意味を理解しているのだろうか。
‥‥‥まさかな。

それでいて、勝ち誇った顔をしているから可笑しくなる。
「どうだ!」と言わんばかりだ。





『今ならいいけど、"いつか"はダメなんだ?』

「ちが、」

『好きになる気満々じゃん。』
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