恋と愛とそれから彼と




適当に買い物を済ませ、家に戻ると早速オムライス作りに着手する。

作り手の権限で昼食に回してもらったのだが、それでもスーパーでひと悶着あったのだ。

あれは結構恥ずかしかったと思う。いい大人が駄々捏ねるってどうかしてる。



ついさっきまで隣に立って見ていた彼女は、「電話してくる」と言って、部屋から消えた。


数分後、戻ってきた彼女は、早くも五月の大型連休の話題を持ち出してくる。

さすがに気が早い。





「ハヤトは何か予定ある?」

『そんな先の話、未定だよ。』

「私、アヤのとこ遊びに行ってくるね。」

『‥‥‥アヤって鹿野?』

「良く覚えてるね。」





鹿野アヤ。
噂によれば、十九で結婚出産をしたらしいが。

彼女の親友だから覚えていただけで、さほど付き合いはない。

それに俺にあいつは鬼門だ。





「子どもが凄く可愛いの。あれは父親似だね。」

『さらっと鹿野のビジュアル否定してるけど。』

「アヤも勿論可愛いよ。でもご主人はかなりイケメンでさ、」

『女の可愛いとイケメンは、男のそれとは違うからなんとも言えないな。』

「そう?」

『自分の目で見て判断したい。鵜呑みにするとバカ見るじゃん』

「酷い。」





あ、チキンライスつまみ食いするな。


「熱いでしょ?」と聞くと、「少し。」と頷いた。そりゃそうだ。





「それで、連休中に会いに行ってくる。」

『やだやだ。ご主人を寝とる気だ?』

「は?」

『やめなよ。妻子持ちなんて、それこそ慰謝料だ、』

「なに言ってんの!?」






彼女が卵を割り、菜箸でかき混ぜ始めた。卵は割れるのか。安心。
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