恋と愛とそれから彼と
彼は何やら色々と買い込んだらしく、「何を買ったの?」と聞くと「寝間着」と答える。
そして、食品売り場で適当に夕飯の材料を買い、全て終えた頃には随分な重量を見せていた。
「何か持つよ」
『じゃあこっちお願い。』
手渡されたのは軽い衣類の方で、スーパーを後にし、再び商店街を抜ける帰り道。
商店街の通りは良く賑わっていることがわかった。
さっきよりも活気がある。
『ナオ、甘党だったよね?』
「え、うん。」
『丁度3時だし、どっか入ろうか。』
「お金持ってないって。」
『奢るよ。付き合ってもらったしね。』
付き合ったというほど、何をしたわけでもないのだが。申し訳なくなる。
「でも、」
『男の奢りを断っちゃいけないよ。ありがとうって言えばいいんだから。』
「‥‥‥ありがとう」
『声ちっちゃ、』
「ありがとう!」
『上出来です。』
商店街の一角にある喫茶店を指差し、「あそこでいい?」と聞く彼に私は頷いた。
しかし、「商店街の一角にある喫茶店」というのは、何故こんなにもレトロなのだろう。
良く言えばレトロ。悪く言えば‥‥そろそろリフォームを。
と、思っていたのだが、扉を開けた瞬間の珈琲の香りときたらもう。‥‥大人だ。
適当な席を選び荷物を置くと、彼は早速メニューを開いた。
お水とおしぼりを持った年配の男性は、喫茶店の雰囲気にぴたりと合った、ダンディーな方だ。
『なんでもいいよ。』
「なにがある?」
『アイス、ケーキ、パフェ‥‥』
「メニュー見せてよ、」
メニューをくるりと反転させ、私に差し出す。
それを見ていたら、いやに視線を感じた。顔を上げると頬杖をつきながら私を見詰める二つの瞳がある。
そんなに見詰められても。