マンホール
立ち止まった。というと、自分の意思のように聞こえる。
じゃ、語弊があった。
立ち止まってしまった。だろうか。
足が動かない。
靴の裏が、粘着性に優れたガムを踏んだように。動きそうで動かない。この場合の動きそうは、頭で、動かないは、体。
いくら頭で進もうとしても、足が断固としてそれを許さなかった。
大騎が振り返る。
手に握られている懐中電灯は、もう用無しだった。暗闇の中で、互いの表情が見て取れる。振り返った大騎の、遥か後方、即ち、僕のずっと前方から、光が差し込んでいた。
出口かな?
そう思ったけれど、足が、頭が、そうじゃないと言っていた。
一筋の光。
太陽。
僕は咄嗟にそう思った。
今や光は、幾つにも分裂し、互いに折り重なり、わさわさと動いている。蠢いている。だから太陽だと思った。静電気のような痺れも感じるし。
あれが、大騎の言っていた秘密?
首を傾げて問うたが、僕を見る大騎の顔は、信じられないくらい、無表情だった。