マンホール
大騎は居なくなった。
桜の雨が舞い降る、マンホールとともに、光の向こう側へと行ってしまった。引き止めることも、追いかけることもできず、僕は桜の花びらが散っていくのを、ただ見上げていた。
大騎は居なくなったのではない。
行ってしまった。
逝ってしまったんだ。
此処ではない、何処かに。
其処が何処かわからない以上、僕は、ただ時間をやり過ごした。
大学受験を経て、町から出だ。
桜が咲くたび、春の青い香りがするたび、あいつの顔を思い出す。
大騎は光に魅せられていた。
と同時に、
光を畏れていた。
泣き笑いの顔を思い出すたび、僕の胸は強く痛んだ。
それも、日々に追われ、すぐに消えていったけれど。