マンホール
家族三人で近所の公園で花見をすると、きまって、場所取りの話になる。和子はクスクスと笑って、きまって言うんだ、
「嘘泣きよ」と。
いや、あれは本当に泣いていたと言い張る僕と、本人が泣いてないって言っていると主張する和子との間で押し問答が始まり、きまって美紀が、うるしゃーい‼と割って入る。
美紀は僕に似ていた。
よかったわね、他の男の子じゃなくて、と和子は言うが、そんな保証は何処にもないんじゃないかとも思うが、今が暖かければ、それでいい。
桜の記憶も、家族の記憶が上塗りされ、やがてそよ家族の記憶も塗りつぶされる日がくるのだろう。それが老いなのかもしれない。
そんなことを口にすれば、まだ30を過ぎたばかりじゃない、と、和子は言うだろう。ついでにとばかりに、洋服が脱ぎっぱなしや、水道をきっちり締めろなんて言われかねないので、美紀を連れて、河原に向かった。
河に沿って、寄り添うように桜が咲いている。
美紀と手を繋いでいたが、肩車がいいと言うので、肩に担ぎ上げる。
二人で朝に観たアニメの主題歌を歌っていたが、すぐに美紀は他のことに気を取られたようで。
あっ、と声を上げ。