マンホール
「ねぇ、最近、美紀の様子がおかしいの」
「マンホールがあるって言うんだけど」
「私には見えないのよ」
「でもあの子はあるって譲らないの」
「先生にも言われたわ」
「いつもマンホールの絵を描くんだって」
「私、心配でたまらないの」
「なんだかあの子が、どこか遠くに行っちゃいそうで」
「ねぇパパ、聞いてる?」
「こんな風に思う私が、どうかしちゃったのかしら?」
「でも不安で…」
「消えてなくなるんじゃ…」
「ううん、そんなわけないわよね」
「ちょっとあなた、なんとか言ってよ」
「笑い飛ばしてよ」
「なんだか顔色悪いわよ?」
「来週のお花見、実家に行くんでしょ?お母さんたちのお土産どうする?え?行かない?だって、毎年、お花見は実家でやるって…」
「…あ、そう。別にいいけど。私が行きたくないみたいに思われるのは嫌よ。美紀はどこでも喜ぶからいいけど。じゃ、どこか探しておくわ、桜の綺麗なところ」