マンホール
ゆっくり振り返る。
桜の花びらが敷き詰められたピンクの絨毯。その中に確かに。
マンホールはあった。
僕にも見える。
あの時のマンホールが。あれからずっと、見えなくなっていた、マンホールが。
一歩ずつ歩を進める。合わせるように、マンホールの蓋が少しずつ開いていく。
漏れる光。
それは体を焼き焦がすほど熱く、心を虜にする。
やっと会えたね、大騎。
僕は膝を折り、蓋の中から伸びてきた手を握った。
小さな小さな。
大騎の手を。
(蓋)