マンホール
僕と大騎、どちらが転校生だと思いますか?
不意に道行く人に尋ねたくなる。
そして道行く人は少しだけ首を傾げると、口を揃えて言うに違いない。
あの大きな男の子は…と。
大きな男の子の周りには、大小、男女問わず友達が群がっているし、ごめんね、君はなんだか、その…独りに見えるから、まだクラスと馴染んでないのかな?仲良くなるコツは、もっと明るく自分から積極的に話しかけること。
ここで僕はビシッと指をさして言う。
転校生はアイツです。
川村大騎は三ヶ月前にやってきた。噂通り、大都会から片田舎に、大騎は目を輝かせてやってきた。
其処には、僕が想像していた力みも、押し殺された孤独もなく、ただ、眩しい笑顔だけがあった。読んでいた文庫本から、僕の視線を剥ぎ取るほどに。
道行く人、誰もが間違えるくらい、大騎はすぐに溶け込んだ。いつまで経っても転校生なのは僕で、ぼんやりと眺めているだけ。
川村大騎を。
活字が細切れになるくらい、ふと気づくと、僕は大騎を見ていた。得体が知れないからだ。得体が知れない。それだけ。
そう。それだけ。
また視線を活字に戻したが、一文字たりと読めなかった。
「優、ドッジやろうぜ」