マンホール
やっぱり本が好き。
僕が出した結論だ。
字は逃げ惑ったりしない。文字はいつも規則正しいし、物語は美しい。本の匂いが好きだし、無限大だ。
それでもドッジボールの駆け引きは嫌いじゃないし、サッカーのキラーパスも悪くない。バスケは専ら3ポイントシュートで、鬼ごっこや、駄菓子を賭けたマジな駆けっこも、嫌いじゃない。
嫌いじゃない。
嫌いじゃない。
好きとは素直に言えないくらい、嫌いじゃない。
僕は静。
大騎は動。
だからよく2人で帰ったりもした。
あの時もそう。
秘密があるのだという大騎についていく。河川敷を通り、路地を抜け、大きな背中を追いかける。壁を飛び越え、有刺鉄線をくぐり、此処が何処だかまるで検討もつかない。
大騎は一度たりと振り返らなかった。
僕がついてくることが分かっているというより、ここで脱落するなら秘密は教えられない。
そう試されているようで、なんとか食らいついた。
大騎に試されているのならば。
応えたい。
大騎に、認めてほしい。
「着いた」