マンホール


やっぱり本が好き。

僕が出した結論だ。


字は逃げ惑ったりしない。文字はいつも規則正しいし、物語は美しい。本の匂いが好きだし、無限大だ。


それでもドッジボールの駆け引きは嫌いじゃないし、サッカーのキラーパスも悪くない。バスケは専ら3ポイントシュートで、鬼ごっこや、駄菓子を賭けたマジな駆けっこも、嫌いじゃない。


嫌いじゃない。
嫌いじゃない。



好きとは素直に言えないくらい、嫌いじゃない。

僕は静。


大騎は動。



だからよく2人で帰ったりもした。

あの時もそう。


秘密があるのだという大騎についていく。河川敷を通り、路地を抜け、大きな背中を追いかける。壁を飛び越え、有刺鉄線をくぐり、此処が何処だかまるで検討もつかない。

大騎は一度たりと振り返らなかった。


僕がついてくることが分かっているというより、ここで脱落するなら秘密は教えられない。

そう試されているようで、なんとか食らいついた。



大騎に試されているのならば。

応えたい。


大騎に、認めてほしい。



「着いた」







< 7 / 30 >

この作品をシェア

pagetop