シュガーレスキス
SIDE 菜恵

 仲直りのチャンスをつぶし、結局聡彦とはまた連絡がとれなくなった。
 携帯の着信を拒否してるのかどうかは分からない。あれ以来私が彼にアクセスを一切とらなくなったから。

「菜恵、最近本当におかしいよ?」

 沙紀が普通に戻ってくれて、私をいつものように心配してくれるのが嬉しかった。
 彼女にだけは秘密にしてられなくて、私は起こってしまった事実を言った。
 休憩室でヒソヒソ話していたから、他の社員さん達が何事か……という目で見ている。

「Yさんがそんな人だとは意外。っていうか……本当に危なかったね」

 沙紀も八木さんがそんな事をするとは思って無かったみたいで、驚いていた。
 あからさまに名前を出すとまずいから、私達は「Yさん」と「Tさん」って事で話している。

「でも仕事の時は全くそんなの感じさせないでしょ?Yさんって結構見た目より複雑な性格してるのかもしれない」

 私はやっと消えかけているキスマークの事を考えながら言った。
 あれ以来何の誘いもかけられてないけど、「しつこいから」って宣言されたのが気になる。
 私が知らないだけで、聡彦と裏で何かあったりするんだろうか。
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