シュガーレスキス
 木枯らしが寒いなと思えるほど秋も深まってきた。
 心も軽く夏を過ごしていたのに、肌寒い秋と供に私の心も冷えた。
 ぼんやりタイプの私でも、さすがに好きな人と関係がこじれてるっていうのは結構つらい日々で。
 でも、私がこんなにつらいんだから、実際裏切られた聡彦はもっとつらいのかなと思った。
 彼が私に「もういいよ」って言ってくれるのをひたすら待つしかない。

 謝っても余計疑惑を深めるだけだ。


 自分達の書いたオフセットが出来上がった。
 私が書いた聡彦の優しい看病漫画も綺麗に刷り上っている。

「菜恵ちゃんの漫画結構評判いいよ。可愛い絵だし、何かこの相手役の鬼畜男がうけてるみたい」

 健太がそう言って笑った。

 そう、私は聡彦役を鬼畜男として書いていた。
 とんでもなく主人公をいじめるんだけれど、心の中では「愛してる!」っていう気持ちでいっぱいっていう設定で。
 実際の聡彦も相当この男に近い人間だと思う。
 でも、さすがに八木さんからキスマークまでつけられた私は鬼畜男すら滅多打ちにしてしまったらしい。
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