シュガーレスキス
「謝らないと駄目かな」

 待ちの体勢ではどうにもならないのを感じて、私はこころもとなくそんな事を言う。

「菜恵ちゃんの自覚が足りなかったのも悪いよね。だいたいさ、自分が結構いけてるの自覚してないでしょ?」

 健太がめずらしく私の容姿の事を言った。
 結構いけてる……?毎日鏡を見てるけど、ぼんやりした顔だし……さほどいけてるとは思えない。

「そんなの知らない」

「ま、そういうのを気取らないから余計いいんだけどさ。その束縛男も菜恵ちゃんがモテるって分かってるから必要以上に警戒してるんだと思うよ。それに、菜恵ちゃんがいなくなって一番困るのはその男だし、絶対向こうからアクセスしてくるから。ゆっくり待ってればいいよ」

 こんなアドバイスをされ、私は健太の言う通り自分からのアクセスは控える事にした。

 趣味の世界に没頭する事で、余計な事は考えないように頑張る。
 ハヤトはこんな私をきっと優しく慰めてくれるに違いない。
 描きかけのイラストを見ながらため息が出る。

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