シュガーレスキス
 ガタンっと大きい音がして、グーンと電気のうなるような音がしたかと思うと、そのままシンとなった。

「……え、止まった?」

 私はびっくりして扉を見た。
 待っても、そこが開く事は無くて、私は思いがけず八木さんと密室に閉じ込められる事になってしまった。
 八木さんは慌てたそぶりも見せず、冷静に緊急連絡ボタンを押して「エレベータが止まりましたが」と報告していて、作業員が到着するまで待って欲しいという指示が来た。

「ついてないね」

 ため息をついて、八木さんはだるそうに壁にもたれた。

「八木さん、何か具合悪そうですけど……大丈夫ですか?」
「ちょっと疲れてるのかな。大丈夫」

 そう言われても、どう見ても顔色が悪くて立っているのもしんどそうに見えた。
 そのうちなかなか作業員さんが来ないのを感じて、彼は床に座りこんでしまった。

「大丈夫ですか!?」

 私は慌ててしゃがんで八木さんの様子を伺う。

「……ん……」

 そう言ったきり、彼は熱っぽい体を私にもたれてきた。
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