シュガーレスキス
「そんな事言われるのは心外です。僕なりに本気で……」
「本気の相手を追い詰めるのがあなたの趣味なの?」

 何でこの人に仕事以外の事で説教されなければならないのか。
 腹立たしいけれど、日下部課長は独身美女だ。
 正直、僕の事は弟レベルで見ている感じがする。

 一時彼女に憧れた事もあったけど、あまりにも僕に対する態度が厳しいと言うか、容赦ないというか……そんな感じだったのもあって、何も告げずにいた。

「後藤さん……て、あの子どう見てもあなたの事怖がってるわよね。正直、社内セクハラであなたが訴えられないか心配してるぐらいなんだけど」

 上司の言う事だと我慢してるけど、これだけの事を頭からガンガン言われると自分のプライドというか……そういうのがガラガラ崩れる感じになる。

「課長は僕をどうしたいんですか。社内での立場を悪くして、抹殺したいと思ってらっしゃるんですか?」

 どう見てもこの人の態度は僕を殺そうとしている感じだ。
 でも、課長はその言葉には首を横にふった。

「分かってないわね。あなたを救いたいと思ってるんでしょう?あなたが暴走して女の子をうまく手に入れられないのを忠告してあげてるのよ」
「余計なお世話ですよ!」

 思わず男としてのプライドが駄目になりそうだったから、強く言い返してしまった。
 一応社内でも好感度の高い男としてやってきている。
 もっと違う手段で迫れば、後藤さんだって落ちないはずがない。
 僕はまだまだ彼女を諦めるつもりはなかった。
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