シュガーレスキス
「あの小羊を解放してあげなさいよ……見苦しいわよ」

 見苦しい……。
 まあ、明らかに僕を拒絶している彼女を見るのはいい気分じゃない。
 これまでだって、一度好きだと言ってくれたのに、付き合い始めると離れていかれるケースが多かった。
 何だろうか……僕の何がいけないんだろうか。

「女はね、一応男から包容されていたいっていうのがあるのよ。でも八木くんは甘えたいばっかりで子供みたいだから……それなりに精神年齢が高い女じゃないとコントロールできないんじゃないかしら」

「包容力が無いと……」

「そうよ」

 ズバッと言われ、何だか体の力が抜ける。

 子供……。
 僕はそんなに幼稚だったか?
 でも、目の前で僕に容赦無い説教をたれている日下部課長から見たら、僕は確かに子供なのかもしれない。

 結局僕はさんざん酒を飲まされ、店を出る時は課長に支えられていた。

「馬鹿ねー……全然変わって無くてあきれた。本当に放っておけないわ」
「うるさいですよ……僕だってね……」

 何か言おうとしたけど、それっきりフツッと記憶が無くなった。
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