シュガーレスキス
 次に目が覚めた時、僕は知らない部屋の天井を見ていた。

「……?どこだ、ここ」

 ぼんやりした頭をかかえてゆっくり起き上がると、隣で声がした。

「起きた?名前忘れたけど、適当に入ったホテルよ」
「く……日下部課長!?」

 ベッドから飛び起きて、真っ暗だった部屋の電気を探した。
 慌てすぎてスイッチを探せない僕に代わって、課長が電気をつけてくれた。
 服装を確認したけれど、一応まだ何も起こってないらしい。

 時計を見ると、まだ11時だった。
 今からなら最終に間に合うかもしれない。

「恥ずかしいところお見せしてすみません。お世話になりました、では……」

 唐突な展開で、さすがの僕も余裕を無くした。

「待って」

 慌てて帰ろうとする腕をはしっとつかんで、彼女はトロンとした目で僕を見た。
 一人でアルコールを追加していたみたいで、ベッドサイドにビールの空き缶が何本か転がっていた。

「ねえ。年下じゃなきゃだめなの?」
「……え?」
「だって、あなたが狙う女の子って皆20代前半の若い子ばっかり。私には一度も誘いかけてくれなかった。もう30過ぎてるし……魅力ないのかもしれないけど」

 今まで一度も見せた事の無い課長の弱気な姿。
 思わず、その姿に欲情してくる自分に焦る。
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