シュガーレスキス
 俺も愛想悪いけど、あの男の偉そうな態度よりはましだ。
 菜恵に対してだけは、特別態度がおかしい俺だけど、企画の中ではごく普通にやっている。
 その偉そうな男……如月俊也(きさらぎしゅんや)といったか?その如月が昼休憩中、休憩室にタバコをくわえて入って来た。

「あんたが舘さん?」

 唐突に“あんた”とか言われ、俺はムッとした。
 年齢は同じくらいで、確かに立場はほとんど変わらないはずだけど、その態度は無いだろう。

「そうだけど」
「あの可愛い受付嬢とつき合ってるって聞きましたよ。後藤さん、そうそう後藤菜恵さん。可愛いですよね」

 言い方に含みがあって、猛烈に腹の立つ男だ。

「あんたには関係ないだろ」

 そっけなくそう言ってやると、如月は嬉しそうにタバコをくわえたままニッと笑って見せた。

「実は彼女を営業に加えてみたらどうかって話しになってるんですよ」
「え?」

 初耳だ。
 菜恵はおっとり系で、営業に向くとしたら木本さんの方が適任なはずだ。
< 133 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop