シュガーレスキス
 如月さんの仕事説明は、ものすごく短くてほとんどメモをとる必要も無いぐらいだった。

「とにかく俺が伝えたい言葉を柔らかい言葉に翻訳して相手に話してくれればいいから。自分で何か考えて話そうとしないで」

「翻訳ですか」

「そう、男同士だと何となくイメージが暗くてね。相手がいい印象を持ってくれるようにフォローして欲しい」

 堂々とした態度で、如月さんはそう言った。
 この高圧的な人がどういう方法で営業成績を伸ばしてるのかすごく気になったけど、言い返すタイミングが無くて、私は黙っていた。

 とにかくこの部署では彼に逆らうとろくなことはなさそうだっていうのは感じ取れた。

 ものすごくクセのある人だっていうのは、鈍い私でもすぐに感じたし、機嫌を損ねずに過ごすのが大変だ。
 真面目過ぎても「つまらねえ」とか言われるし、冗談かと思って笑ってみると「そこ笑う場所じゃないから」と、冷静に怒られたりした。

 とにかく短気。
 さらに王様気質。
 上司に対してもそれほどへりくだったりしない。

 聡彦で変な男は見慣れたかに思ったけど、まだまだいるんだな……変な男の人って。
 私はこんな発見をして、一人で感心したりしていた。
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