シュガーレスキス
 いつも通りの営業車の中。
 今日の得意先は口説き落とせるか結構難しい場所で、何となく緊張してしまう。

「仕事好きになれそう?」

 如月さんが、めずらしく質問をしてきた。

「え……っと。まだ好きかどうか分からないですね。でも、嫌いじゃないかも」

 売れた時の喜びは実感してみて、何となく癖になるなあと思っていた。

「そうか、じゃあ素質あるかもな。駄目な奴は今の後藤さんの時点で辞めたいって口にするから」

 そんな事を言って、如月さんはちょっと嬉しそうな顔をした。

「如月さんは自分で希望を出して、このお仕事になったんですか?」

 どちらかというと外で頭を下げるのとかって、得意じゃ無さそうだったから、ずっと不思議だった。
 この質問に、如月さんは少し考える仕草をした。

「……人間が嫌いだったんだ。そういう自分を好きになれなくて……それで、無理に人間を相手にしなきゃいけない仕事をすればいいのかなって思って、この部署を希望した」

 意外過ぎるほど真面目にこんな答えを返してくれた。

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