シュガーレスキス
「受付っていうのはどこかで限界があるかもしれないけど、営業だったら仕事に終わりないからね。女性にどんどん仕事社会にも進出してほしいし……男が主婦やるのだって本当はOKな気がするよ。得意な方をやればいい」

「そう……ですね」

 なかなか今時らしい思考回路の男性だ。

 実際、結婚して子供が出来ても仕事を続ける女性っていうのは増えてるけれど、それをフォローする社会体制が弱いのは現実だ。
 もっと男性側で女性を受け入れる体勢を積極的に見せてくれれば、安心して仕事を続けようって思えるんじゃないかな……なんて思ったりした。

「後藤さんとの呼吸は決して悪くないと思ってる。続けてくれる?」

 真顔でそう言われたから、私は“これは冗談ではないだろう”と思って、「はい、頑張ります」と答えた。

 ふざけている時は意地悪そうな笑みを浮かべているけれど、真剣な時はまばたきもしないで目を開いているから、観察していれば彼の心がある程度分かるようになってきていた。

「ありがとう」

 何故かお礼まで言われてしまい、何となくいつもとはペースが違ってちょっと戸惑う。

 結局この日アタックした得意先は、如月さんの詳しい商品の説明と、私のそれに対するフォローという連携プレイで見事に落ちた。

「まさかここが落ちるとは思わなかった」

 帰りの車の中で、如月さんはやや興奮していた。
 私も初めての大口だったから、安心感で自然に体の力が抜けてきていた。
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