シュガーレスキス
 今まで私が聡彦に疑惑を持たれるケースばかりだったのに、今回の沢村さん登場っていうのは、実は結構な強力ライバルになるというのはまだ想像できていなかった。

 お互いに仕事上のパートナーは別々の魅力ある異性と組む事になってしまった。
 私は如月さんに人間としての魅力を感じているのは否定できない。
 それと同じように、聡彦も真面目に仕事に取り組む沢村さんの事は嫌いではないみたいだった。

 何となく私には如月さんとの噂が立ち、聡彦には沢村さんとの噂が立った。



「嫉妬ってきりが無いけど……やっぱり気になるものだね」

 私は直接沢村さんの事を口にするのがためらわれて、何となく雰囲気でそういう事を言ってみた。
 聡彦は私の言いたい事をすぐに理解して、軽くため息をついた。

「真面目に仕事やってるだけだろ?菜恵だって如月とまんざらでもない感じじゃないか」

 この言葉に、私はカチンときた。

「何、その言い方。いつも聡彦はこれよりひどい言い方で私に勝手な疑惑ふっかけてくるじゃない」
「前の事なんて引き出されても知らないね。今俺は如月と菜恵の事だけについて言ったつもりだけど?」

 明らかな逆切れだ……。
 ずるい。
 自分は噂になる女性がいても良くて、私じゃあ駄目だっていうの?
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