シュガーレスキス

1-4 重なり合う愛

 雰囲気が悪いまま、私達はお互いのアパートに泊まる事を止めていた。
 仕事が忙しくなったのもあるし、やっぱり相手の気持ちが何となく疑わしいという事も原因だった。

 もともと聡彦は私に近付く男性全てに敵対心を持つ独占欲の強い人だ。
 私はそういう彼の性格も含めて好きなつもりだったけれど、沢村さんの登場で心に余裕が無くなった。

 私が如月さんに照れ笑いをしてるとか……そういう特別な好意が伝わる行動をしてるかどうかなんて客観的には分からないけど、彼に好感は持っているのは確かだ。
 一緒に仕事をするのだから、悪意があったら続けるのは難しくなってくる。
 これが「恋愛感情なのか」と問われても私の中では「違う」と思っていて。
 聡彦を思う気持ちの方が何倍も大きいし、彼を失う事の恐怖も当然ある。

 なのに、一緒に仕事をしている人に人間として魅力を感じる事を強引に禁止されたり、抑圧するっていうのは私の中では納得できない事だ。

 沢村さんに妬いてるのは事実だけど、私の気持ちは可愛い甘えの域だったと思う。
 あそこで「妬いてるの?」「菜恵だけだよ」とか……(死んでも言わないだろうけど)私を安心させる事を言ってくれれば良かったのに。
 逆切れみたいなセリフを言われたから、私も嫌になってしまった。

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