シュガーレスキス
「俺はずうずうしいから言うけど。舘さんに振り回されて苦しんでるなら、遠慮なく俺を利用してもいいよ」

「……え?」

「だから、舘さんを本命にしたまま俺に頼ってくれてもいいって事。あの人では満足させてあげられない部分をフォローできるかもしれないし」

 瞬きの回数が減って、目線が真剣だった。
 これは嘘を言ったり冗談を言ったりする彼の状態では無い。

「如月さん……すごく人気ありますよ。私なんか相手にしないで、他で十分素敵な女性を探せると思いますけど」

 私は彼の申し出があんまり不思議だったから、こんな事を言っていた。
 自分を都合のいい男にしてもいいなんて、自ら申請してくる人なんて始めてだ。

「どんな恋にも終りがある……って分かりきった事だよね」

 こんなセリフをポツリと言われ、何だか心が苦しくなる。
 私と聡彦の間が危ういという事が言いたいんだろうか。
 私はまだ聡彦が好きだし……別れようなんて全く思ってない。

「俺はそういう終わりのある恋にはもう興味が無いんだ」
「……」

 如月さんの恋愛論は、ちょっと独特だった。
 私が抱えている「利己的な恋愛」とは違い、彼は「自己犠牲恋愛」とでも言えるようなものだった。
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