シュガーレスキス
「後藤さんいいなー……。企画の舘さんと付き合ってて、さらに如月さんとは仕事のパートナーでしょ?やっぱ男運って独りの女性が独り占めするように出来てんのかなあ」

 嫌味っていうより、本当に“彼氏欲しい”といつも嘆いている三ノ輪さんがガックリした顔でそう言う。

「いや、別に運なんか良くないですよ?」

 これは本音だ。
 聡彦の裏の顔を見れば、半分くらいの女性は引くはずだ。
 如月さんのクセだって、見極めないと唐突に怒鳴られたりするから気を使うし……。

「運って使い過ぎると、どこかでドカンと落とし穴があるから気を付けて下さいねー」

 宝くじでも当たったなら、そういう心配もするけど、聡彦と付き合ってるのは私の努力が実った結果だと思ってる。
 数ヶ月、訳も分からず命令され続けるなんて経験は、なかなか無いと思うんですが。
 こんな事情を知らない人にとってみれば、私が無条件に聡彦に愛されてると思ってるのかもしれない。

 まあ……最近の聡彦は角がとれたっていうか、ツンの部分が少し減った気がする。
 会社では一切言葉も交わさないけど、アパートに戻るとわりと普通に話す。
 ただ、如月さんとの会話が多かったり、外勤があったりすると「何話したの」って素直に言えないからムスッとしてしまい、機嫌を戻すのが大変だ。

「如月さんとは仕事の事しか話してないよ」

 そう言ってみるんだけど、「別にそんなのどうでもいい」とか強がるから、自然に彼の気持ちが落ち着くのを待つしかない。
 私もだいぶ「ツン慣れ」して来たなあ……とか一人で思っている。
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