シュガーレスキス
 魅力的な女性がたくさん彼の周りにはいるのに……私を愛してくれて、ありがとう。
 こんな気持ちが沸きあがっていて、私はベッドサイドに座ってずっと彼の手を握り続けた。

「付き添いの方は1名だけでお願いします」

 看護師さんがドライな声で私達にそう声をかけた。
 聡彦のご両親は遠方に住んでおり、連絡はしたけれど明日にならないと病院へは来られないようだった。

「私が残りますから」

 私は沢村さんが残りたい気持ちがあるのを分かっていて、強く自分を出した。
 聡彦を誰かに任せて帰るなんて出来そうも無い。

「すみません……何かあったらすぐ携帯に連絡ください」

 沢村さんはそう言って、自分の携帯番号を私に教えてくれた。

「大丈夫です、きっといい報告が出来ると思いますから」

 こうして、私はこの夜を聡彦と供に病院で過ごした。

「ねえ……早く目を覚まして。明日にはまた私のアパートでキスしよう?」

 心の中でこんな言葉をかけながら、私は聡彦が明日には笑顔で「菜恵」って呼んでくれるのを信じていた。
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