シュガーレスキス
とても話す気になれなかったけど、仕方ない……私は力無くその電話に応答した。
「はい」
『あ、おはようございます。舘さんの様子いかがですか?』
「……ええ、意識は戻りました。それに生活にも支障が無いようなので、さっきアパートに送り届けたので。大丈夫です、多分少し遅れて出勤すると思います」
『良かった!意識が戻られたんですね?』
沢村さんの喜ぶ声は、私には何だかとても不愉快なものだった。
私という人間の狭さを思い知る状態になっており、優しい言葉が全く思いつかなかった。
この人のせいで聡彦は記憶を失った。
こんな軽い恨み言のような思いが頭に浮かんでしまい、私は慌ててそれを打ち消した。
「とりあえず彼は大丈夫なので。ここ数年の記憶が曖昧になってますけど、そこは職場でフォローしていただければ大丈夫だと思います」
『記憶が曖昧……ですか?』
「ええ。逆行性健忘症っていうらしいです。私の事も覚えて無くて、多分3年前ぐらいからの人の事は曖昧になってると思うので……それは上司の方に本人が伝えると思います」
私の声がどんどん暗くなるのを察知して、沢村さんは「分かりました」と短く答えて携帯を切った。
「はい」
『あ、おはようございます。舘さんの様子いかがですか?』
「……ええ、意識は戻りました。それに生活にも支障が無いようなので、さっきアパートに送り届けたので。大丈夫です、多分少し遅れて出勤すると思います」
『良かった!意識が戻られたんですね?』
沢村さんの喜ぶ声は、私には何だかとても不愉快なものだった。
私という人間の狭さを思い知る状態になっており、優しい言葉が全く思いつかなかった。
この人のせいで聡彦は記憶を失った。
こんな軽い恨み言のような思いが頭に浮かんでしまい、私は慌ててそれを打ち消した。
「とりあえず彼は大丈夫なので。ここ数年の記憶が曖昧になってますけど、そこは職場でフォローしていただければ大丈夫だと思います」
『記憶が曖昧……ですか?』
「ええ。逆行性健忘症っていうらしいです。私の事も覚えて無くて、多分3年前ぐらいからの人の事は曖昧になってると思うので……それは上司の方に本人が伝えると思います」
私の声がどんどん暗くなるのを察知して、沢村さんは「分かりました」と短く答えて携帯を切った。