シュガーレスキス
 シュワっとはじける口の感覚で、ぼんやりしていた脳が少し活性化される。

「舘さんとの事も悩みの原因なんだろうけど……社会人なんだからもっと責任持って仕事やれよ」

 とうとう如月さんも耐えかねたように語気を荒くした。
 プロ意識の強い彼の事だから、プライベートで悩みがあるぐらいで表にそれを見せるのはルール違反だと言いたいのだろう。
 私だって聡彦との付き合いだけの悩みなら頑張っていたと思う。

 でも……今の私は現実に厳しい精神状態にあり、体もつわりでひどい事になっている。

 言い訳じみるから、どの事実も口にはしたくなかった。
 でも、体調が悪い事は隠せないし……もう仕事を辞めさせてもらったほうがいいのかもしれない。

「あの。私の事をパートナーから外してくれませんか」
「どういう事?逃げるの」
「違います。この先如月さんにはもっと迷惑をかける事になると思うんです。だから……」

 そこまで言って、何故か涙が出てきた。
 こんな場面で泣いたら、何か意味がありそうで自分の中では必死で止めようとしていた。
 なのに涙腺が勝手に緩む。
 体力も無くなってるから、自分の心を制御できなくなっているみたいだ。
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