シュガーレスキス
「後藤さん……何か本当におかしい。舘さんの事だけじゃなくて、他にも何かあるのか?」
急に声のトーンを抑えて、如月さんが優しくそう訊ねて来た。
「いえ、ちょっと。やっぱり体が調子悪いんです」
「病気?何の病気なの」
彼の質問の仕方は答えないわけにはいかない不思議な力がある。
私はその質問にも首を横にふった。
うまく嘘がつけない……頭がまわらない。
如月さんは私のどんよりした顔を見て、しばらく黙っていた。
日陰に停めていたから、冷房もかけてなくて、自然の風が送り込まれるように窓は全開になっている。
そよっと風がふくたびに、少し心も落ち着く。
「間違ってたら、すごく失礼なんだけど」
こういう前置きの後、彼は鋭く事実を突いてきた。
「まさか、舘さんとの間に命を授かったとか……そういう事は無い?」
「……」
どうして嘘を言えないんだろう。
違いますって一言言えばいいのだ。
それで、どうしても体調が悪いから仕事は辞めさせてもらいたいと言えばいいのに。
私の態度で如月さんの洞察が当たった事を知られてしまった。