シュガーレスキス
 今目の前にいる聡彦はどうだろう。
 私の趣味とか、私の性格を知って、好ましいと思ってくれるだろうか。

「後藤さん?」

 私が答えないから、聡彦は不思議そうな顔をして見た。

「ごめんなさい。ちょっと色々思い出しちゃって。その名前はね、私のミドルネームみたいなもので……あなたはそれをいたずらで入れてたんだと思う」

「そうなんだ。確か本名は菜恵って名前なのに、って不思議だったんだ」

 こうやって話していると、何だか半分聡彦なんだけど半分違うみたいな……変な気分になる。
 今だって抱きしめたいほど好きなのに、彼が私と同じ気持ちじゃないのは見ていれば分かる。

「あの……あのね」

 私は運ばれてきたレモンスカッシュを一口飲んだところで切り出した。

「うん。何?」

 聡彦はまさか今から私が言おうとしている事なんか、想像もつかないっていう穏やかな顔をしている。

「……」

 言葉が出ない。

 あなたの子供を宿してるの……産みたいんだけれど、認知してくれる?

 こんな言葉、全く出てこない。
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