シュガーレスキス
 あり得ない結論だ。
 彼は自分の人生をどう考えてるんだろうか。
 子供を持つっていう重さを分かってるんだろうか。
 如月さんが、そんな単純に命を扱うとは思えない。だからこそ、私の問題も一生懸命考えてくれた。限界まで聡彦との仲を取りもとうとしてくれた。

「だって、後藤さん産む気でしょ。迷ってるのは、産んだ後どうしようかって事なんでしょ」

 何でこの人は、何も言わないのに私の心を読んでくるんだろうか。
 
 そう……。
 私は聡彦の子供を諦める事は出来そうもないと思っていて、一人でどうやって育てようかという事で悩んでいた。
 なのに、血の繋がってないこの子を……如月さんは自分の子にしてもいいと言っている。
 とんでもないお人よしか、物事を深く考えない適当な人か……どちらかとしか思えない。

「俺、本気で惚れてるんだ。だから、適当な気持ちでこういう事を口にしてる訳じゃない……それだけは分かって欲しいな」

 私が90%の確率で彼の申し出を断るのを分かっている……という口調で、如月さんはそう言った。
 
 愛しているのは聡彦だけ。

 彼に真実を告げられず、それでも彼の子供を私は産もうとしている。

 それを知っている如月さんが、今、手を差し伸べてくれている……。

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