シュガーレスキス
「でも……」

 やっぱり答えがすぐに出て来ない。
 
 如月さんの事は頼りがいがあって、素敵な男性だと思っている。
 確かに少し心を揺らされている部分もあるのは事実だ。
 でも、だからといって彼の好意に完全に甘えるなんて人間としてどうなのか……と考えてしまう。

「すぐに答えなくていいよ。どっちにしろ産むならゆっくり考えればいい」

 私が押し黙ってしまったのを見て、如月さんはなるべく心が軽くなるように言葉を選んでそう言ってくれた。
 こんな素敵な人が、私をそこまで思ってくれているなんて申し訳ない気にすらなってしまう。

 どうすればいいんだろう。

 何も考えないで、寝て起きたら全部夢だった……って事にならないだろうか。

 私の心は、とうとう現実逃避に走りそうになっていて、軽く分離症状が出ている感じだった。
 精神的負担は、ダイレクトに体にも響いていて。


 とうとうある日の朝、私はトイレで大量出血してしまった。
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