シュガーレスキス
「舘さん、ごめんなさい。謝りきれません」

 俺が庇ってやった沢村さんが、やたら申し訳なさそうに謝ってくる。
 この子の指導担当もしていたらしいけど、それすら俺は記憶が無い。

「いや、とりあえず体は平気だし。逆にこれから俺が何かと面倒かけるかもしれないから……よろしく」

 こんな事を言って、俺は仕事がややぎこちなくはなったものの、何とか復帰した。

 沢村さんとの仕事は、かなり快調だった。
 一通り仕事内容は教えられてあったみたいで、特に指示しなくても彼女はスピーディーに仕事を上げてくる。

「舘さんの教え方、すごく上手でしたから」

 俺が褒めると、沢村さんは顔を赤くして自分の仕事成果を俺のおかげだと言った。

 どうも自分をちゃんと取り返せてない気がして……日々が何となく物足りない感じだ。

 後藤さんに会っても、付き合いを続けるのは止めたいと言われ……俺も身動きとれなくなった。
 何気なく様子を見ていたけど、彼女の立ち振舞いや言葉の雰囲気からいって、かなり自分にとっては好感の強いものがあった。
 記憶は無いのに、何だか知らないけどあの子を独占したいという気持ちがあった事だけぼんやり思い出したりした。

 もっと会話したいのに……何故か彼女はそれを拒む。

 その理由を知ったのは、それからすぐの事だった。
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