シュガーレスキス
「言ってなかった?俺、本当は双子で生まれてさ。先に生まれた女の子の方は生まれてすぐに亡くなったんだ。だから、本当なら俺は姉貴がいたはずなんだけど。両親は俺を見ると亡くなった姉貴を思い出すって言ってて……ずっと生き残った俺が何だか責任があるような罪悪感の中で生きてきた」

 そう。
 俺は二人分の人生を背負わされて生きている気がして、早く両親の元を離れたかった。
 愛されすぎて苦しかったというか……。
 だから、今菜恵が身ごもった子供っていうのは、俺を救う為に戻ってくれた姉貴なんじゃないかっていう気がした。

「大事な人を失いたくないって言ってたの、そういう事だったんだね」

 菜恵は俺の気持ちを汲み取るように優しい瞳を向けた。

 何だろう。
 菜恵に感じるこの深くて心地いい安らぎは。
 まるで初めて母親に抱きしめられた時のような……そんな気になる。
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