シュガーレスキス
「俺ともう一度……一緒に生きてみてくれない?」

 握った手にキスをして、俺は本気のセリフを口にした。
 関係を完全に戻すには時間がかかるのは分かっている。
 でも、それでもこの可愛らしくて愛情深い女性を……俺は一生をかけて守りたいという気持ちが芽生えていた。

「いいの?あなたとの子供を……産んでいいの?」
「当たり前だろ。少しでも隙があったら、如月さんが菜恵をさらってしまう勢いだったからさ。何か軽く焦ったよ」

 冗談ぽくそう言ってやると、菜恵はやっと安心した笑顔を見せた。

「如月さんはね、私達の救世主なのよ」
「そう?俺に対しては敵対心しか見せてこなかったけど。まあ……これから俺は、あの人に奪われないように、君を大事にするだけだ」

 こうして……俺達は天から授かった大事な命を二人で育てる決意をした。
 完全に記憶が戻らないうちは、多少ぎこちなくなるのは想像出来るけれど、それでも俺は菜恵と一緒に暮らして少しずつ心を通わせたいと強く思っている。

 俺の男としての……人間としての大きな人生の覚悟を決めた瞬間だった。
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