シュガーレスキス
 聡彦も私の複雑な心を理解しようと歩み寄ってくれた。

「……そうだな。菜恵の心と体が完全に落ち着いた頃に、もう一度この事は話そうか」
「うん」

 記憶はぼんやりみたいだけれど、自分でつけてた日記を見て私達がどういう付き合いをしていたのか、彼はだいたい分かってきたみたいだ。

「菜恵は、アニメオタクだって書いてあった。俺……それを知ったのがきっかけで菜恵を好きになったみたいなんだよ」

 そう言って聡彦は笑った。

「今の聡彦は?こういう趣味の私をどう思う?」

 同じ人だけど、その時の感じ方で色々思う事は違ってくる気がして、一応気持ちを確認してみた。
 すると聡彦は笑顔のまま私の手を握った。

「今も昔も無いって。何度言えば分かるんだよ。菜恵の好きなもの、感じるもの。俺は無条件で全てを気に入ってた。今だって、同じだよ……俺をもう少し信用してくれない?」

「ごめん。やっぱ多少気になるんだよ」
「それはそうだろうけど……」

 こういう言葉の後は、少し間ができる。
 気まずい瞬間だ。

 私がこういう時間を作ってしまっている気がする。
 聡彦はなるべく昔の事でゴタゴタ考えないように未来の話をしようとするのに、私は過去を語ろうとする。

 この違いが、お互いの関係を少しギクシャクさせていた。
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