シュガーレスキス
「会社の人、他には来ない?」

 間をごまかすように、聡彦が少し心配したような顔でそう聞いてきた。

「沙紀とルリちゃんは時々来るけど。他は……どうして?」
「いや、何でも無い」

 私の耳に入れたくない情報でもあるんだろうか。
 沙紀もルリちゃんも、特に何か不自然な話題は出してなかったし……。
 私の中で、小さくはてなマークが出たけれど、あまり気にしないようにすぐ忘れる事にした。



 退院が明日という時になって、突然沢村さんが訪ねて来た。

「お体いかがですか」

 そう言って、綺麗なブーケタイプの生け花をテーブルの上に置いた。
 彼女の顔は一応笑顔だったけど、何となく緊張した様子があって、私も身構えてしまう。

「ええ。明日退院なので……もうだいぶいいですよ」
「そうですか」

 それだけ言って黙って椅子に腰を下ろすと、言葉を失ったように彼女は黙ってしまった。

「……どうしました?」

 私の中で、沢村さんがここへ来た理由が何となく察知出来ていた。
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