シュガーレスキス
「分かりました。安定期に入ったらそうしようと思ってましたけど……もう少し早めます」

「そうして下さい」

 これだけの会話だったけれど、如月という男の潔さを感じた。
 あの男は菜恵を手に入れられる数パーセントに掛けていたんだろう。ライバルとしてはものすごく手強い相手だ。
 俺自身が認めてしまうほど、奴は人間としての度量が広い。
 これからもちょっと監視されそうな気はするけど、菜恵を渡す気は全く無いし、それは如月も分かっているみたいだ。
 何より、菜恵が俺に対する気持ちを露にしたというのが大きかったのかもしれない。



 沢村さんとは、職場からそんなに離れていないコーヒーショップで会った。
 仕事が終わって、その店を目指して歩く。
 まだ西の空がボンヤリ明るい。
 菜恵が心配しないよう、一応9時前には戻るとメールする。
 いくら話が長引いても、それ以上遅くなる事は無いだろうと思ったからだ。

「お疲れ様です」

 先に席についていた沢村さんが軽く手を上げて立ち上がった。

「お疲れ様」

 沢村さんは先に自分のコーヒーは買っていたようだから、自分用のアイスコーヒーだけ買って、席に着く。
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