シュガーレスキス
「菜恵、食べられそうだったら」

 そう言って、皿にてんこもりのチャーハンを出した。

「食べきれないよ!」
「誰も一人で食えとは言ってないだろ。残したぶんを俺が食うんだ」
「あ、そう。ならいいや」
「作ってもらって、そういう言い方か?」

 そう言って、チャーハンの皿を菜恵の目の前から取り上げる。
 すると、スプーンだけ手にした菜恵が「あ」と小さく声にして不満そうな目線を向けてきた。

 また記憶の回路が一つ繋がる。

「あ、菜恵……。お前俺と一緒に食べる予定だった餃子一人で食っちゃった事あったよな?」

「え?あんな前の事思い出したの?しかも……餃子の事なんて」

 明らかに馬鹿馬鹿しいという顔だ。
 でも、俺にとっては一つ思い出を取り戻す度にすごく嬉しい気持ちになる。

「食い物の恨みはそれだけ怖いって事だ」
「分かった、私が悪かった。だから、チャーハンください」

 相当お腹がすいてるみたいで、菜恵は立ち上がってチャーハンの皿を手にとろうとした。
 その姿が何とも……コミカルで、笑える。
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